顔出しNGだった社長が動画に出た日。応募者数3倍の理由
こんにちは、チャコウェブの横山ゆみこです。
顔出しNG。
ずっとそう言い続けていた社長さんが、ある日、カメラの前に立ちました。
私たちが説得を続けて信頼関係が育ってきた、あるタイミングのことです。
社長さんはカメラの向こうを見つめながら、自分の会社への想いを、ゆっくりと言葉にされました。
それは、綺麗にまとめられた宣伝動画ではありませんでした。
むしろ、少しぎこちなくて、途中で言葉が止まったりする、そんな動画でした。
けれど、その動画を見た人の中に、確実に届くものがあったのです。
先週のニュースレターでは、あるロードサービス会社の話をお伝えしました。
今回はその続きとして、 社長本人が発信することの力 について、深くお話ししていきます。
目次
「顔出しNG」を貫いていた社長さん
説得の末、動画の前に座った日
応募者数が、1ヶ月で3倍に
「社長のつぶやき」という専用コンテンツ
なぜスタッフの発信では届かなかったのか
「手触り感」というキーワード
経営者が発信をためらう、5つの理由
ためらいを超えた社長さんに、何が起きたか
明日から始められる、経営者の発信の3つの実践
まとめ:経営者の言葉には、その人しか出せない力がある
「顔出しNG」を貫いていた社長さん
先週ご紹介した、採用で成功したロードサービス会社の話には、実は続きがあります。
この会社では、ホームページ、ブログ、SNS、ショート動画など、あらゆる媒体で発信を続けていました。
スタッフの取材や動画撮影も、社長さんは積極的にOKを出してくださっていました。
「うちの現場はこう」「うちのスタッフはこんな人たち」と、会社の在り方を多面的に見せていく方針は、変わらず貫かれていたのです。
ただ、ひとつだけ、社長さんが最後まで首を縦に振らないことがありました。
それが、 社長さんご自身の顔出し です。
「私は前に出るのが得意ではないので」
「スタッフを主役にしたい」
そう言い続けておられました。
私たちも、無理に説得しようとはしませんでした。
そのお気持ちを尊重しながら、他の発信を一緒に育てていったのです。
説得の末、動画の前に座った日
長い時間をかけて信頼関係が育ってきたある日、私たちは改めてご提案しました。
「社長さんの言葉で、少しだけ話していただけませんか」
「うまく話そうとしなくて大丈夫です」
「原稿を読むのではなく、普段お話しされているままで」
社長さんは、少し考え込まれた後、ようやくうなずいてくださいました。
そして撮影当日、社長さんはカメラの前に立ったのです。
最初はぎこちなく、言葉に詰まる場面もありました。
綺麗にまとめられたプレゼンではありません。
けれど、社長さんは、自分の会社への想いを、ご自身の言葉でゆっくり話されました。
「うちの会社は、こういうサービスをしていて」
「働いてくれているスタッフには、感謝している」
「これからも、地域のみなさんの役に立ちたい」
飾りのない、素の言葉でした。
応募者数が、1ヶ月で3倍に
その動画を公開してから、変化はすぐに現れました。
応募者数が、1ヶ月で3倍になったのです。
これまでの発信でも、応募者は増え続けていました。
ですが、社長さんが動画に出られたことで、変化のスピードが一気に上がったのです。
面接に来られた方々は、こうおっしゃいます。
「動画を拝見しました」
「社長さんが、真剣に話されているのを見て、ここで働きたいと思いました」
「言葉が飾られていないところが、逆に信頼できました」
社長さんは、この反応を最初は信じられなかったようです。
「私、うまく話せなかったのに」と苦笑されていました。
でも、応募者の方が求めていたのは、うまさではなかったのですよね。
社長さんが、ご自身の言葉で真剣に話されている、その姿そのものだったのです。
「社長のつぶやき」という専用コンテンツ
動画が起点となって、社長さんの発信は少しずつ広がっていきました。
現在は、ホームページに 「社長のつぶやき」 という専用コーナーを作っています。
ブログやSNSでも、社長さんが簡単な言葉で発信する場を設けました。
現場で感じたこと
スタッフへの感謝
地域のお客様への挨拶
お仕事の後の一言
長い文章ではありません。
数行の、素朴なつぶやきです。
それでも、そこに社長さんらしさがしっかり出ているのです。
「今日も無事に一日が終わりました。スタッフに感謝です」
「あるお客様に、久しぶりだねと声をかけていただきました。嬉しかったです」
こういう飾らない言葉が、読んでくださる方の中に、じんわりと届いていきます。
なぜスタッフの発信では届かなかったのか
ここで、大切なことをお伝えします。
スタッフの発信は、それはそれで素晴らしいものでした。
現場の様子、車両の紹介、日々の業務の風景。
これらは、応募者にとってとても大切な情報になっていました。
けれど、 どうしてもスタッフの発信では届かないもの があったのです。
それが、 経営者の哲学・想い・在り方 でした。
「この会社は、何を大切にしているのか」
「社長さんは、どんな考えでこの会社を経営しているのか」
「働く人を、どう扱っているのか」
これらの問いに答えられるのは、経営者ご本人だけなのですよね。
スタッフがどれだけ丁寧に発信しても、経営者の哲学は、経営者の言葉でしか伝わりません。
社長さんが動画に出られたことで、応募者はやっと、その会社の「在り方の中心」に触れることができたのです。
「手触り感」というキーワード
社長さんの発信を見ていて、私は「手触り感」という言葉が浮かびます。
支援会社が綺麗にまとめる発信は、確かに美しいのです。
文法も整っていて、写真も綺麗で、動画もプロっぽい。
けれど、そこには「触った感じ」がありません。
一方、社長さんご自身が発信すると、少しぎこちなくても、言葉に詰まっても、そこに 手触り感 が生まれます。
「この人は、実在する人だ」
「本気で会社のことを考えている人だ」
「作り物ではない、本物の人がここにいる」
読んだ人・見た人の中に、そういう感覚が育つのです。
そしてこの感覚が、応募や問い合わせという行動に繋がっていきます。
綺麗さより、手触り感。
これが、経営者ご自身の発信が持つ、他では代替できない力です。
経営者が発信をためらう、5つの理由
とはいえ、多くの経営者の方は、発信をためらいます。
私が現場で見てきた「ためらいの理由」は、大きく5つあります。
1. 顔を出すのが恥ずかしい
2. 書くのが苦手
3. 業界の同業者に見られるのが嫌
4. 「自分がこんなふうに出ていいのだろうか」という戸惑い
5. 炎上が怖い
1. 顔を出すのが恥ずかしい
これは、とても多い理由です。
「自分の顔を、たくさんの人に見られる」ことへの、素朴な恥ずかしさです。
若い頃の写真を見せられて赤面するような感覚に、近いかもしれません。
2. 書くのが苦手
「文章を書くのは苦手で」とおっしゃる経営者の方も多いです。
学生時代の作文の記憶が、大人になっても残っている場合もあります。
3. 業界の同業者に見られるのが嫌
これは意外と根深い理由です。
「近隣の同業の社長さんたちに見られるのが、なんとなく嫌」
足の引っ張り合いが少しある業界だと、余計に強く感じられるようです。
4. 「自分がこんなふうに出ていいのだろうか」という戸惑い
「自分が前に出ることが、会社のためになるのだろうか」
そんな戸惑いを抱えている方も、少なくありません。
謙虚な方ほど、この戸惑いは強いように感じます。
5. 炎上が怖い
SNSに慣れていない方は、炎上を過度に怖がる傾向があります。
テレビやメディアで見る「有名人の炎上事件」を思い浮かべて、自分にもそれが起こるのではないかと。
ですが、地域の小さな会社の発信が、そういう炎上に巻き込まれることは、実際にはほとんどありません。
「どのように炎上が起こるのか」を知らないから、余計に怖くなってしまうのですよね。
ためらいを超えた社長さんに、何が起きたか
先ほどのロードサービスの社長さんも、これらのためらいをすべて持っておられました。
それでも、ある時期を境に、変わっていかれたのです。
私たちと継続的にお話しし続けて、少しずつ「発信の必要性」を感じてもらいました。
そして何より大きかったのは、 社長さんご自身がSNSを見るようになったこと です。
スタッフや自社の発信を通じて、社長さんも自然とSNSを見るようになります。
すると、他社の発信が目に入ってきます。
「あの会社は、こんなことを伝えている」
「この社長さんは、こんなふうに話している」
そういう目の当たりが、社長さんの中に 「自分も本気にならなければ」 という気持ちに火をつけました。
これが、動画の前に座るという決断に繋がっていったのです。
きっかけは、外から与えられるものではなく、社長さんご自身が「見えた」ときに生まれます。
だからこそ、周りの人間ができるのは、社長さんが自然と気づける環境を作ることなのですよね。
明日から始められる、経営者の発信の3つの実践
ここまでの話を踏まえて、経営者の方が明日から始められる実践を3つご紹介します。
1. 完璧を目指さず、まずは1行のつぶやきから
いきなり動画に出る必要はありません。
まずは、1行のつぶやきから始めてみてください。
「今日、あるお客様に嬉しいことを言われました」
「スタッフが頑張ってくれています」
「現場を見て、感じたことがあります」
こういう素朴な一文で、十分です。
完璧な文章を書こうとするから、続かなくなります。
うまさではなく、率直さが伝わります。
2. 業界外の人に、発信を見てもらう
家族、友人、業界外の知人。
そういう方に、ご自身の発信を見てもらってください。
「これ、伝わる?」
「読んで、どう感じた?」
業界の中の人ではなく、外の人に聞くことが大切です。
業界の外にいる人の反応こそが、あなたの発信が届いているかどうかを教えてくれます。
3. 顔出しなし・声だけ・後ろ姿から、段階的に
いきなり顔を出さなくて大丈夫です。
段階的に、自分のペースで進めていってください。
無理のないペースなら以下のようになるでしょう。
最初は、文章のみ
慣れてきたら、声だけの音声
現場の様子を撮った動画に、顔は出さない形で登場
後ろ姿だけの動画
少しずつ、横顔・斜め・正面へ
一気に完成形を目指さず、自分の心地よいペースで少しずつ広げていってください。
無理に踏み出すと、続かなくなります。
続くことこそが、いちばん大切なのですから。
まとめ:経営者の言葉には、その人しか出せない力がある
経営者自身の発信には、他の誰にも出せない力があります。
会社の哲学、日々の想い、大切にしている価値観。
これらは、経営者ご自身の言葉でしか伝わりません。
どんなに優秀なスタッフや支援会社がいても、経営者の言葉を代弁することは、本当の意味ではできないのですよね。
ためらいがあって当たり前です。
恥ずかしくて、書くのが苦手で、他人の目が気になって、戸惑いがあって、炎上が怖い。
すべて、素朴で正直な感情です。
けれど、そのためらいの向こうに、あなたの会社の未来を変える力があります。
1行のつぶやきから、少しずつでいいのです。
ゆっくり、自分のペースで、始めていただきたいなと思っています。
来週のお知らせ
このニュースレターは、来週7月29日(水)の配信をもって、一区切りをつけることといたしました。
これまでの回でお伝えしてきた内容の総まとめと、みなさまへの感謝を、最終回でお届けする予定です。
今週の記事も、来週の最終回も、最後まで丁寧にお届けしますので、どうぞよろしくお願いします。
このテーマに関連して、チャコウェブのブログでも詳しくお伝えしている記事があります。
【経営者の情報発信の本質を、もう一段深く】
経営者が知るべき情報発信の本質。情報発信を資産に変えるマインドセット
ご感想や、「自社の社長として、こういう発信を始めてみた」というお話があれば、ぜひメールに返信する形で教えていただけると嬉しいです。
最終回、7月29日にお会いできるのを楽しみにしています。
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